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骨盤の解剖
まずはこのページをご覧いただき有難うございます。
私は骨盤の仙腸関節を調整するテクニックを軸とする関節運動学の勉強を長年してまいりました。骨盤に対する知識は誰よりもあると自負しております。
そんな骨盤マニアの私ですが、昨今の骨盤矯正ビジネスに一石を投じたいと思っています。
骨盤矯正という言葉は医学用語にではありません。医学的にも認められていません。整体業界が作った造語です。
骨盤の解剖
では骨盤で矯正できる場所とはどこなのか、解剖図を利用しながら説明します。
骨盤で動かせるのは赤丸で囲った部分の仙腸関節と恥骨結合の2か所みです。
後述しますが、どちらも通常はほとんど動きません。
もし2センチも3センチも恥骨結合や仙腸関節がズレていたら歩けません。手術適応レベルです。
通常と述べたのは、妊娠期のみホルモンの影響で、関節をつなぐ「じん帯」がユルユルになり骨盤はグラグラします。しかし産後1カ月程度でまた元に戻ります。産後の不調について詳しくはこちらから
この時に正しく戻らなかったり、元々腰痛や肩こりなど、不具合の合った方は施術対象となります。人類は20万年も前から今と同じ妊娠、出産という繁殖活動を続けています。骨盤を元に戻していく力が備わっています。したがって、特に不調のない方は、1、2回お体を整える施術をすれば問題ありません。
施術法
仙腸関節と恥骨結合は連動して動くため、仙腸関節を正しく動かすアプローチを軸に骨盤へアプローチします。1ミリ2ミリの世界で、施術を受けている側は何をされているのか分かりません。
この際骨盤だけでなく、必ず首から背中にかけての関節(頚椎・胸椎)も調整していきます。骨盤から腰椎の硬さは、首の骨や肩こりと相関関係にあるからです。
骨盤矯正という言葉が流行りだしてからイメージされているボキボキ、ガシャーンという音を立てるような圧力は骨盤や頚椎を調整するためには不要です。
仙腸関節や、腰椎から頚椎の動きをチェックし、骨盤が正しい位置、正常な機能になってから筋肉のバランスを整えていきます。
筋肉の硬さも「腸腰筋」が硬くなっている人、「太ももの後ろ側」の筋肉が硬くなっている人など様々です。その方のバランスが整う様に筋肉を緩めていきます。
こんな骨盤矯正サロンに注意
骨盤矯正は様々な治療院やサロンで行われていて、受けたことのある方も多いと思います。残念ながら、骨盤矯正と言われている施術のほとんどが不要なものです。
解剖に対する知識が無い一般の方の不安をあおり、高額な回数券を売りつけている店も数多くあるのが現状です。
特に下記のような治療院にはご注意ください。
- とにかく回数券を勧めてくる(売上重視)
- 一様に派手な音を立てて施術する(やってもらった感がある)
- 足の長さがズレている=骨盤のズレだという(知識不足)
回数券の購入は必要?
腰痛など症状が無い方の場合、1、2回の骨盤調整だけで終わる方がほとんどです。人の体は十人十色です。必ず決められた回数通わなければいけないなどいう事はありません。
当院にも、他院にて回数券を購入した経験をお持ちの患者様が、多数お見えになります。途中で効果がないのが分かったけど、もったいないから最後まで通った、もしくは結局最後まで通わなかったという方ばかりです。先ほども述べたように骨盤は20万年も前から、産後元に戻るようにできています。
では、特別体の不調が無いのに「体が歪んでいるため回数券がお得です」と勧めてくるのはなぜか?
そういう風にマニュアル化された商品だからです。パッケージ化された商品なのでどんな方にも行う施術は同じです。3回目でこのように説明する、5回目でこのように施術すると決められています。
ルーティーン化されているのです。
腰痛でも原因は様々です。したがって施術方法も回数もアプローチする部位も毎回人により変わるのが普通です。
スタッフが多い店舗がこのように施術をルーティーン化し、回数券を勧める事が多いようです。その方がサービスを均一化することができ、若いスタッフの技術不足を補えるからです。技術、説明の方法がマニュアル化しており、要するに経営サイドが楽なわけです。
症状がない方では多くの場合、検査してお体の固くなっている関節を調整する1,2回で十分です。
当院では痛みや不調がある方にのみ、お得な回数チケットをおすすめしています。(定期ケアに通う方には症状無くてもおすすめしています。)
骨盤の調整に派手な音を立てる施術はNG
派手な音というのはベッドの音が鳴る事もありますし、骨をボキボキ鳴らすという意味でもあります。骨盤の解剖でも説明した通り、骨盤はそんなに大きく動きません。動かないようにできているのです。大きな音が出るほど圧をかけたりする必要はないのです。かけてはいけないのです。
患者様が「やってもらった感」があるだけです。これも先ほど述べたように、スタッフの施術を均一化するためにできた施術法です。※全ての施術者を否定しているわけではありません。非常に優れた技術や知識を持った施術者もいます
足のズレ=骨盤のズレではない
ロボットと違い、生まれつき左右1ミリも変わらず骨が成長するとは限りません。そして足とひとくくりに言っても、太ももの骨、スネの骨、足の骨、等様々な骨の長さを合わせたのが、いわゆる「足の長さ」です。実際は様々なパターンがあります。
例えば左右の太ももの骨の長さは同じだが、右スネだけ短い、したがって右足が短い。この場合どれだけ股関節や骨盤にアプローチしてもスネの骨は伸びません。右足が短いのが正常なのです。これを無理に右側の足が長くなるように右半身の筋肉を緩めたり引っ張ったりすれば体のバランスは崩れてしまいます。
骨盤は一つの骨ではなく、関節を形成して成り立っています。
お尻の真ん中あたりの仙腸関節左右で2か所と性器の上辺りの恥骨結合1か所です。
どちらも通常はほとんど動きません。2ミリ程度です。もし2センチも3センチも恥骨結合や仙腸関節がズレていたら歩けません。手術適応レベルです。骨盤(仙腸関節や恥骨結合)がズレて2,3センチも足の長さが違えばまともに生活できないのです。
単純に筋肉のバランスが悪いだけのケースも多くあります。腸腰筋などの筋肉が硬くなり縮こまると付着し居ている太もも部分を上に引っ張るため、足の長さに左右差が出ます。
この場合は通常のマッサージやストレッチで簡単にそろいます。
私も足の長さの左右差を指標にすることはあります。しかし、下肢長差=骨盤のズレではありません。骨盤の傾きや筋バランスの指標であり、仙腸関節、恥骨結合のズレを判断できるものではありません。
恥骨結合離開
骨盤のズレと呼べるケースがあります。恥骨結合離開です。
かなりの痛みで歩行困難なほどの事もあります。
恥骨結合は滑膜性関節で関節円板を介してつながっており、通常はその動き非常に限定されています。恥骨結合離開は通常2‐6mmであり妊娠末期に7-10mmになります。10mm以上で恥骨結合離開と診断されます。発生率は0.26%とまれです。
産後の恥骨結合離開では、離開しているのにボキボキ鳴らしたり、過度なストレッチしたところで離開は広がってしまうので禁忌です。基本的に治療院でなく病院で治療すべき疾患です。
治療方法は、恥骨を近づけてベルトで固定するのが一般的です。全く変化がない場合、恥骨や腰椎がずれたまま固定していることが考えられます。その場合当院では、細心の注意を払い、骨盤や腰椎の捻じれにアプローチします。
妊娠中は、ホルモンの作用で骨盤を固めている靭帯や、仙腸関節と恥骨結合に緩みが出ます。赤ちゃんの通り道を広げるわけです。
そしてそれが妊娠中の腰痛を引き起こす原因の一つになっています。この緩んだじん帯は産後1ヶ月程度で元に戻ります。恥骨結合離開は、離れた恥骨が戻らなくなってしまう状態です。
そこにボキボキッと強烈な圧をかければ治るどころかダメージを与えているだけです。せっかく戻ろうとしているじん帯をまた強制的に引き延ばす、すなわち「ねん挫」を生じさせることになります。
リスクファクター初産、双胎妊娠、経膣分娩です。
中部日本整形外科災害外科学会雑誌/62 巻 (2019) 2 号/骨盤創外固定で治療した出産に伴う恥骨結合離開の1例高須 厚他
本物の骨盤矯正を受けて下さい
骨盤は非常に複雑で繊細にできており、その機能は未だ全て解明されていません。デリケートな仙腸関節へのアプローチは非常に高度な技術が求められます。私は骨盤へのアプローチを中心とした関節運動学を長年勉強し、技術の習得に励んできました。大切な骨盤、お体です。骨盤矯正をお考えの方はぜひ当院へご相談下さい。